定年間近になって、リタイアするかそれとも再就職や雇用継続を申し出てさらに働くか?
皆さんどうされますか。悩む人は大勢いらっしゃると思います。
定年時にどれくらいの老後資金が確保できているかが一つの要点になるでしょう。
人生100年と言われ、生活資金を得るために65歳になってもまだ働く環境が整いつつありますが、一方、働き手の働く気持ちを損なうような制度があります。
それは、在職老齢年金制度です。
年金が貰える人でも、働いて給与が貰えるなら、「生活に困らないだろうから、貴方に支払うべき年金であってもあげませんよ」という制度です。
私は、働いていると特別支給の厚生年金が全額貰えないことが分かったので、リタイアをしてフリーランスを選びました。
そこで、今回は在職老齢年金制度について考えたいと思います。
同じ様で意味の違う言葉が沢山出てくるので、注意して読み進んでください。
1.在職老齢年金制度とは、
・65歳以上で、老齢厚生年金を受け取る事が出来る人が、さらに月給与・賞与を受けられるならば、その報酬額に応じて、年金額を減らしますというものです。
支給を停止するのは、「総報酬月額相当額+基本月額」の額が、支給停止調整額を超えている期間です。
・ここで言う、「総報酬月額相当額」とは、
標準報酬月額+ (1年間の標準賞与額の総額)/12の額です。つまり賞与を月割りにして、1ヶ月分の報酬額に換算した額のことです。
・「基本月額」とは、老齢厚生年金の額を月額に直した額です(加給年金、繰下げ加算額、経過的加算額は除きます)。
・支給が停止される期間は、会社に勤めて厚生年金の被保険者となった月の翌月から、会社を辞めて被保険者で無くなった月までになります。
1.1 支給が停止される額
・(総報酬月額相当額+基本月額>支給停止調整額)のとき、支給が停止されます。
・支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額−支給停止調整額)1/2になります。
・支給停止調整額は、平成31年4月から47万円に改正されました。
・支給停止調整額とは、減額を始める目安の額です。総報酬月額相当額+基本月額がこの額を超えなければ、減額はありません。
1.2 支給停止の具体例
① 総報酬月額相当額+基本月額≦47万円の場合は、支給停止されません(つまり年金が全額支給されます)
② 総報酬月額相当額+基本月額>47万円の場合
支給停止基準額=(総報酬月額相当額+基本月額-47万円)×1/2が、支給停止されます(月額)。
《例 総報酬月額相当額:40万円 基本月額:18万円の場合》
支給停止基準額=(40万円+18万円-47万円)×1/2=5.5万円(月額)。よって、5.5万円が支給停止されるので、貰える年金額は、18万円−5.5万円=12.5万円(月額)に減額されました。
③ 支給停止基準額>厚生年金の額の場合は、厚生年金の全額が支給停止されます(加給年金額を含みますが、繰下げ加算額と経過的加算額が除かれます)。
*②の場合は、加給年金は支給されます。
*①②③の場合であっても、老齢基礎年金は全額支給されます。あくまで厚生年金の部分です。
下表に、総報酬月額相当額と基本月額と年金支給額の関係を表にまとめました。
2.特別支給の厚生年金における在職老齢年金
特別支給の老齢厚生年金(65歳未満)にも同様に在職老齢年金制度が適用されます。
それも、65歳以上より停止される金額が大きくなっています。
60歳から年金が支給される時代を知っている私から見ると、特別支給の厚生年金は当然の権利です。
そのため、厳しく減額されることは、労働者の働く意欲をそぐとこに繋がっています。
2.1 支給が停止される額
・総報酬月額相当額+基本月額>支給停止調整開始額 となった時に、支給停止が行われます。
・計算式は、下表の通りです。65歳以上より複雑ですね。
総報酬月額相当額 | 基本月額 | 支給が停止される額(月額) |
47万円以下 | 28万円以下 | (総報酬月額相当額+基本月額-28万円)/2 |
28万円超 | 総報酬月額相当額/2 | |
47万円超 | 28万円以下 | (47万円+基本月額-28万円)/2+(総報酬月額相当額-47万円) |
28万円超 | 47万円/2+(総報酬月額相当額-47万円) |
・支給停止調整開始額……28万円
減額を始める目安の額です。「総報酬月額相当額+基本月額」がこの額を超えなければ、減額はありません。
・支給停止調整変更額……47万円 平成31年4月から
総報酬月額相当額がこの額を超えた場合に、支給停止調整開始額に替わって適用されます。沢山貰いすぎた場合にさらに減額を増やすための額です。(・д・)
・基本月額=定額部分+報酬比例部分 となります。65歳以上と違って、定額部分が含まれます。
・加給年金額は調整の対象外ですが、特別支給の老齢厚生年金の全部が支給停止となる場合のみ、支給停止されます。
下表に、総報酬月額相当額と基本月額と年金支給額の関係を表にまとめました。
2.2 支給停止の具体例
65歳以上の場合と比較してみましょう。同じ条件で支給停止額を計算します。
《例 総報酬月額相当額:40万円 基本月額:18万円の場合》
支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)/2
=(40万円+18万円−28万円)/2=15.5万円 18万円−15.5万円=2.5万円
特別支給の厚生年金における在職老齢年金と在職老齢年金の比較表
特別支給の厚生年金における在職老齢年金 | 在職老齢年金(65歳以上) | ||
支給停止額 | 年金支給額 | 支給停止額 | 年金支給額 |
15.5万円 | 2.5万円 | 5.5万円 | 12.5万円 |
いかがでしょうか?いずれにせよ、年金が減額される、又は全く支給されないと言う事は、どうなのかと疑問を持たないわけにはいかないです。