相続で戸惑わないための知識編 (相続開始から完了までの流れ)
両親がいくら元気だとしても、いつかは来る相続。その時になって慌てないようしっかりと備えておくことは大切です。
でも、「相続なんて、相続税を払うぐらいの財産がある人しか関係ないんじゃないか」と考えていませんか?それは間違いです。
近年、家庭裁判所が扱う遺産分割の調停は、相続税のかからない家庭のケースが増えてきています。
つまり相続税がかからない家庭であっても、揉めているケースは多いと言うことです。
逆に、5000万円以上の資産のある家庭では調停は少ない傾向にあります。
また被相続人が、事業などで借金を抱えている、連帯保証人になっているといった場合も考えられます。
財産がなくとも、負債がある場合、安易に相続してしまって、思わぬ借金をかぶることも大いにあり得ます。
相続で家族が揉めないため、また債務を相続しないためにも、準備しておくことは重要だと考えました。
今回、私が相続する事になった時の備忘録として、いくつかのテーマで作成してみました。
おそらく高齢の母に代わり私が色々と手続きをすることになると思います。(私の母が喪主になった場合の一時相続を想定して書いています)
【被相続人が亡くなってから、相続に関するスケジュール表】
7日以内 | ・役場に死亡届を提出する |
3ヶ月以内 | ・葬儀を行う
・金融機関・生命保険会社等に連絡する ・役所に葬祭費を請求、年金事務所で遺族年金支給の手続き、未支給年金を請求する ・遺言書の有無を確認し、もし見つかれば家庭裁判所で検認してもらう ・被相続人の戸籍を取り寄せて、相続人を調べる ・相続財産を調べ、その価額の評価を行う ・遺産分割協議を行う ・必要があれば、限定承認、相続放棄の手続きを行う |
4ヶ月以内 | ・必要があれば、所得税の準確定申告を行う |
10ヶ月以内 | ・遺産分割協議書を作成する
・遺言書または、遺産分割協議書を基に遺産の相続の手続きを行う ・相続税額(相続税の計算)の申告と納付を行う |
1年以内 | ・必要があれば、遺留分減殺請求を行う |
ざっと書き出してみても、やらなければならないことが山ほどありますね。
葬儀が終わって、気持ちが落ち着いたところで、色々な手続きが始まります。
1. 7日以内に行う事
・役場に死亡届と火埋葬許可申請し火葬の申込を行う。
・葬儀をおこなう。
2. 3ヶ月以内に行う事
2.1 役場以外への連絡
2.1.1 金融機関に連絡し口座をロックする。
・相続人が勝手にお金を引き出して使わないようにすることで、遺産分割のトラブルを回避し、限定承認が必要な場合の条件を確保しておくことが出来る。
2.1.2 生命保険会社に連絡し、死亡保険金等の加入保険の支払手続きをする。
・保険金受取人は単独で申請する事が出来る。
2.1.3 健康保険の保険者に埋葬料を請求する。
・葬祭費5万円が給付される(埋葬料、埋葬費)。
2.1.4 未支給の年金の請求、遺族年金の支給を申請する(配偶者に支給)。
・被相続人に支給されていない年金を請求し、厚生年金の場合は、遺族厚生年金支給の手続きも行う。
2.2 遺言がある場合
・見つけた遺言書は家庭裁判所で検認する。
・遺言に従って遺産分割を行う。遺産分割協議は行わなくとも良いがする事も出来る。
・遺留分の侵害があれば、1年以内に遺留分減殺請求を行う。
2.3 遺言がない場合
・被相続人が生まれてから亡くなるまでの、すべての戸籍謄本や除籍謄本、改正原戸籍謄本を取得して、被相続人の親族関係を確認する。
・相続財産と債務を確認する(自宅・ネット取引・郵便物のチェック。役所で固定資産課税台帳を確認する。預貯金の残高証明書を取得するなど)。
・相続財産の評価を行う。
財産:土地・家屋・預貯金・株式・ゴルフ会員権・骨董品・美術品・貴金属など。
債務:借入金・自動車ローン・連帯保証人他。
・遺産分割協議を行う。
全員が集まって遺産分割協議が出来ない場合は、メールや手紙、電話などで行うことが出来る。
協議不調の場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる → 不成立 → 遺産分割審判となる。
・財産の状況によって、相続するかどうかの意思決定(単純承認・限定承認・相続放棄)を行う。
・遺産より債務が多い可能性がある場合は、3ヶ月以内に、相続するかどうか決めなければならない。相続放棄や限定承認の選択肢を考える。
[注意]限定承認は相続人全員で行わなければならないので、一人でも単純承認すると限定承認はする事が出来ない。
3. 4ヶ月以内に行う事
・所得税の準確定申告を行う(被相続人が事業主の場合・2000万円以上の収入のある給与所得者・医療費控除などを受ける場合)。
課税される所得税額は、相続人が支払い義務を負います。
4. 10ヶ月以内に行う事
4.1 遺産分割協議書を作成する。
遺産分割協議書には、全員が署名押印(実印がベスト)する。
(不動産の相続登記は、実印と相続人全員の印鑑登録証明書、遺産分割協議書が必要であるため)
4.2 遺言書または、遺産分割協議書を基に遺産相続の手続きを行う。
預貯金の払い戻し、株式等・不動産・ゴルフ会員権の名義の書換え、骨董品や美術品の受取り。
4.3 相続税を計算する。
・基礎控除までなら相続税は不要。控除を利用して、相続税を非課税にする場合は申告が必要。
・相続税の軽減制度を利用する。(配偶者の法定相続分または1億6千万までの非課税枠の活用、障害者の控除制度の活用。その他、小規模宅地の特例などの控除制度を利用して相続税を軽減させる)。
4.4 相続税を申告し納税する
・遺産分割協議がもしまとまらない場合は、法定相続人が法定相続分を申告して納税しておく。
・遺産分割協議がまとまった後に、更正請求して相続税を再計算し納付し直すことが出来る。
5. 1年以内に行う事
遺言や贈与よって遺留分が侵害された時は、遺留分減殺請求を行い取られすぎた財産を取り戻すことが出来る(兄弟姉妹は遺留分がないので出来ません(;_;))。
以上で相続手続きは完了です。
6.まとめ
戸籍から新たな相続人が見つかることがなく、遺言書に第三者への遺贈が書かれてなくて、または遺言書がなく、債務より財産が多ければ、そして相続人が円満に遺産分割協議を進め、遺産分割協議書をまとめることが出来ればこんな楽な相続はないですね。
でも、お金が絡むと円満な親戚関係であっても何が起こるか分からないのが相続です。
揉めるとろくな事はないのが世の常です。少なくとも最低限の知識と理論武装をしておきましょう。