経験したからわかる、賢い退職金の貰い方

会社員は長年勤めた会社を定年退職する時に、ご褒美として高額な退職金を手にします。
ところが、現役時代は自分がいくらぐらいの退職金を貰えるかをちゃんと知っている人は少ないのです。

漠然と「これぐらいかなぁ」と言う程度で、退職金の明細書を見るまで分かっていないのです。

又、退職金と一口に言っても、一時金や、確定給付企業年金(以後DB)、企業型確定拠出年金(以後DC)、最近では、iDeCoも加わり選択肢の種類が多く、更にそれぞれの受給方法に違いがあるため、話はややこしくなっています。

ここでは、退職金の受給の方法によって、税金が増えたり、減ったりする事を考慮に入れながら、どういう受取り方をすると一番手取りが多くなるかを、ケースバイケースで比較しています。

1.退職金制度の概要

退職金制度のある企業には、かならず退職金規程が就業規則に明記されています。
(最近では、退職金制度のない企業も増えてきています。その代わりに、退職金分を給与に上乗せや、DCなどを採用する企業が増えてきています)

企業によって、退職金制度はまちまちですが、私の勤めていた会社を例に説明してみます。
なので、当てはまらないかたがおられるかも知れませんが、ご容赦ください。

1.1 退職金制度は、何回か改定されましたが、最終的にポイント制となりました。

企業の業績が伸びにくくなった頃から、退職金制度の改革が行われてきました。企業が生き残り、退職後の社員の生活を守ることを条件に、最終的にはいくつかの指標で決まったポイントを付与していく制度に落ち着きました。付与されたポイントは、一時金とDBとDCに一定の比率で分割され、退職日まで積み立てられます。

このポイントの合計が退職金の額の基礎になります。

1.2 仮にAさんの場合を例に説明します

Aさんの退職金の算定方法を以下の通りとします。

毎月60ポイントが付与されます。その内の50%(30ポイント)が一時金に、30%(18ポイント)がDBに、20%(12ポイント)がDCに積み立てられるとします。

勤務年数は38年間で、1ポイントを1,000円で計算します。(昇進等によるポイントアップを無視する)

一時金額 30ポイント×12月×38年×1,000円=13,680,000円
DB額   18ポイント×12月×38年×1,000円=8,208,000円
DC額    12ポイント×12月×38年×1,000円+300万円(運用益)=8,472,000円
DCの運用益を300万円とする。それぞれを合計した3,036万円が退職金の総額になります。

2.税引き後の退職金の額は、受取り方の違いによって変わります

退職金の税額の計算式は下記の通りです。

ⅰ 退職所得控除額=800万円+70万円×(勤続年数−20年) (勤続が20年未満の場合は、40万円×勤続年数)
ⅱ 課税対象額=(退職一時金額−退職所得控除額)/2
ⅲ 所得税=課税対象額×所得税率
ⅳ 住民税=課税対象額×10%
で計算します。

2.1 税金を少しでも少なくする方法を考えましょう

退職金を受け取る方法にはいくつかの選択肢があります。

Aさんの選択肢で、主なものは下表の通りです。

一時金 (1,368万円)DB (820.8万円)DC (847.2万円)
一時金で受給一時金で受給一時金で受給
一時金で受給年金で受給一時金で受給
一時金で受給年金で受給年金で受給
一時金で受給一時金で受給年金で受給
一時金で受給年金で受給一時金と年金の併給

それぞれのケースについて、税金を考えてみます。

2.1.1 ①の場合は、すべてを一時金として受け取るケースです

ⅰ 退職所得控除額=800万円+70万円×(38−20)=2,060万円
ⅱ 課税対象額=(退職一時金額−退職所得控除額)/2=(3,036−2,060)/2=488万円
ⅲ 所得税=課税対象額×所得税率=488万円×20%−42.75万円=54.85万円
ⅳ 住民税=課税対象額×10%=488万円×10%=48.8万円

税金の合計額は、54.85+48.8=103.65万円です。課税関係はこれで終了です。

2.1.2 ②の場合は、一時金の額が、2215.2万円

ⅰ 退職所得控除額=800万円+70万円×(勤続年数−20年)=2,060万円
ⅱ 課税対象額=(退職一時金額−退職所得控除額)/2=(2215.2−2,060)/2=77.6万円
ⅲ 所得税=課税対象額×所得税率=77.6万円×5%=3.88万円
ⅳ 住民税=課税対象額×10%=77.6万円×10%=7.76万円

税金の合計額は、3.88+7.76=11.64万円です。

しかし、今後受け取る年金(DB)に対して、その所得に所得税と住民税が課税されます。

2.1.3 ③の場合は、一時金の額が、1,368万円

一時金の額が、退職所得控除額の2,060万円より少ないので、所得税も住民税もゼロ円です。
しかし、今後受け取る年金(DBとDC)に対して、その所得に所得税と住民税が課税されます。

2.1.4 ④の場合は、一時金の額が、2188.8万円

ⅰ 退職所得控除額=800万円+70万円×(勤続年数−20年)=2,060万円
ⅱ 課税対象額=(退職一時金額−退職所得控除額)/2=(2188.8−2,060)/2=64.4万円
ⅲ 所得税=課税対象額×所得税率=64.4万円×5%=3.22万円
ⅳ 住民税=課税対象額×10%=64.4万円×10%=6.44万円

税金の合計額は、3.22+6.44=9.66万円です。

しかし、今後受け取る年金(DC)に対して、その所得に所得税と住民税が課税されます。

2.1.5 ⑤の場合は、一時金の額と退職所得控除額を同じにする 

一時金の額と退職所得控除額が同じなので、所得税も住民税もゼロ円です。
そして、DCの残り155.2万円を年金で受け取ります。退職所得控除額を全部使い切った形です。
しかし、今後受け取る年金(DBとDC)に対して、その所得に所得税と住民税が課税されます。

2.1.6 ⑥その他

DCを70歳まで指図者として運用する方法などがあり、選択肢は増えます。

2.1.7 ⑦留意事項

年金を選択した時(①以外の場合)の税金関係は、雑所得として公的年金控除を差し引いたあとに、医療費控除や社会保険料控除、基礎控除、扶養控除等の控除を受けたあとの課税所得金額に、額に見合った税率が乗じられます。さらに、住民税が課せられます。

年金の所得金額が一定の額より少なければ、非課税や、少額で済む場合もあります。逆に高額であれば、所得税、住民税それに社会保険料の負担が増加することになり、かえってトータルの支出が増加することがあるため、一概に結論を出すことは出来ません。
よって、ケースバイケースで対応するしか方法がありません。

私の場合、DBを年金にすると、20年確定の終身給付でしたので、迷わず年金で受け取る事を選択しました。

DCは、一時金で受け取った方が将来の税額と社会保険料を低く抑えられると判断したので一時金で受け取りました。

3.まとめ

退職金は、リタイア後の大切な生活資金です。長年勤め上げたご褒美として、またリタイア後の生活を豊かにしたいという願望をかなえるためにも、少しでも多く受け取りたいのが人情です。

3.1 ①の場合、税金は高額になります

①を選択した場合に支払った税金額は、将来的にはトータルの税金と社会保険料の増額分より少なくなると思われます。一般的にも、一時金で受け取る方が有利と考えられています。

しかし、年金の額は人それぞれなので、一概にすべての人に当てはまるものでもありません。

上記のケースと自分を比較して、一番良い方法を考えていただくための参考になれば幸いです。

3.2 最後に、いつ頃支給されるのか参考程度になりますが、私の例をお知らせします

退職一時金:退職日までに振り込まれます

DC:退職日以降に裁定申請書類が送られてきます。そして、退職一時金と合算されて税金の処理が終わった後に、振込手数料を引いた額が振り込まれます。9月末に退職して、振込日は12/20でした(;_;)。

DB:9月末退職でしたが、支給開始は、11月分(12月に支給)からになりました。

(2019/04/01に更新しました)

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