令和3年度の「年金額」が決まりましたが、去年より減額です
1月22日に厚労省からリリースがありました。
《 目 次 》
1.今年の4月分から、年金額が変わります
実際に受け取るのは、6月からです。(だって4月・5月分が6月に支払われるからね。つまり後払い^^;)
そして、気になる額はというと、
前年の「物価」と「賃金」が下がったおかげで、今年はマイナス改定です。
(令和2年度は、0.2%のプラスでした)
2.マイナス率は、令和2年度金額の0.1%引き
リリースによると、
国民年金は、 65,075円/月で、前年から66円/月の減額です。
厚生年金は、220,496円/月で、前年から228円/月の減額です。
生活に影響するような削減額ではありませんが、コロナ禍で精神的に滅入っている中、心情的には寂しい気がします。
それに加え、厚労省の資料は平均値なので高めになる傾向があります。
この金額より少ない世帯のほうが実際は多いのではないかと思います。
3.老後の生活資金としての年金額の妥当性
皆さんは、この金額をみてどう感じられるでしょうか?
老後の生活に十分な額だと思われますか?
それとも、心もとないでしょうか?
一般的に言われている、「経済的に豊かな老後生活を送るためには、夫婦2人で月額35万円程度(年間420万円)が必要と言われています。
4.公的年金ではとうてい足りない
そうすると、公的年金だけでは全然足りないことがおわかりいただけると思います。
いつも思うことですが、
・老後の生活資金は、現役時代にしっかりと作っておく
・リタイア前には、ローン等の負債を清算しておく
・リタイア後に、年金収入以外に収入を得る方法を準備しておく ことが大切です。
なぜかと言うと、
同世代(私も今年で高齢者の仲間になります)でお金に苦労していない人達は、財産を沢山相続した人は別として、
・現役時代に稼いだお金で、賃貸に出している家(アパート)やマンションの一室を持っている
・株式投資で稼げる
・株式の配当がある
・現役時代の経験を生かして、バイト程度の収入がある
・負債がない
・そこそこの蓄えがある(いくらぐらい持っているかは腹のさぐりあいで不明だが^^;)
など、貯蓄や年金以外の収入の手段を持っています。
年金以外の収入が、年間に手取りで100万円以上あれば、ゆとりが生まれるというのが私たちの共通の認識です。
5.「2,000万円問題」
2年程前に「2,000万円問題」が世の中を騒がせたことを覚えているでしょうか?
このときは、老後の生活に必要な費用が、年金額だけでは2000万円足りないといことでした。
生活習慣やお金の使い方、人生の価値観は人それぞれなので、一概に2000万円足りないとは言えませんが、それでも危機感は持ったほうが良いと思います。
リタイアしてしまった後では、選択肢は少なく手の打ちようが限られますが、まだ現役で働いている人は、まだ間に合います。
自分と家族のために、老後のライフプランを組んで見る事をお勧めします。
自分でするもよし、もし自分でできなければ、FPというプロに依頼することも選択肢の一つです。まだ日本では、FPにお金を支払って相談する習慣がないです。
しかし、一生に一度の人生です。
将来の年金額を含めたライフプランとキャッシュフローをプロに依頼するのが一番の早道です。
私も、リタイア前に、退職金額と将来受け取れる年金額のシミュレーションを散々しましたが、思っているほど多くはないことに驚きました。
「お金が無くても、心の持ちようで幸せな生活が出来る」という人も多くおられます。
しかし、医療・介護費など思わぬ負担が生じると、行き詰まってしまいます。
ある程度の資産はどうしても必要なのです。
6.モデル世帯の税金・社会保険料と使えるお金
ここからは、厚労省のリリース資料をもとに、「年金収入以外の収入のない世帯」を仮定して、可処分所得、税金、社会保険料をシミュレーションしてみましょう。
6.1夫婦とも国民年金受給者世帯の場合
6.1.1世帯の所得税額
夫婦ともに国民年金受給者の年金額は、それぞれ780,900円/年です。
公的年金等控除をすると、夫婦ともに「所得額はゼロ」になります。(年金支給額より公的年金等控除額の方が多いから)
6.1.2所得税と住民税
「所得額がゼロ」なので、世帯の所得税額・住民税額はともにゼロ円です。
6.1.3国民健康保険料
令和3年度の基準がまだリリース前なので、令和2年度の基準で計算します。
国民健康保険料も、所得を基準に計算します。
「所得がゼロ」なら、「保険料もゼロ」になる、なんて、そんな甘いことはありません。
国民健康保険料は、均等割、平等割、所得割の合計額と決まっています。
なので、所得割(所得額に掛かる)はゼロ円ですが、均等割、平等割は負担しなければなりません。
ただし、「所得額」と「世帯人数」によって、減額制度があるので、負担額は低く抑えられています。
【 計 算 】
大阪市の例で計算してみましょう。
世帯の所得と人数から、軽減率7割の対象となります。
途中の計算式は煩雑なので、ここでは結果のみ示します。(100円未満を切捨)
約31,300円/年(7割軽減後の額)
6.1.4介護保険料
今年は、介護保険料の改定年でありますが、まだ基準が発表されていないので令和2年度の基準で計算してみました。
介護保険料は、各市町村によって金額が異なります。
何故なら、介護保険を沢山利用している地域では自ずと高額になるし、人口構成が若い人が多ければ少なくなる傾向になります。
【 計 算 】
政令指定都市でトップの高額保険料をキープする大阪市の基準を用いました^^;
夫婦ともに、保険料段階は、第2段階の33,294円/1人です
所得税や住民税がゼロ円の世帯であっても、社会保険料は減額制度がありますがゼロにはなりません。
国民健康保険料と介護保険料の世帯合計額は、97,916円/年(年金収入の6.3%)となります。
年間の可処分金額は、1,463,884円/年(121,990円/月)です。
夫婦で月12万円という額はどうでしょうか?
持ち家でなければ、かなりきつい感じがします。
6.2厚生年金受給の世帯の場合
夫を厚生年金受給者とします。
220,496/月には、妻の国民年金額が含まれているので、それを差し引くと夫の厚生年金額は155,421円/月、年間は1,865,052円です。
夫の年金収入、1,865,052円/年から公的年金等控除を行った後の所得額が、765,000円(100円未満切り捨てました)
所得税は基礎控除・扶養控除を行うと、ゼロ円になります。
住民税も基礎控除・扶養控除を行うと、ほぼゼロ円と言って良いと思います。
6.2.1国民健康保険料
国民健康保険料は、所得額から33万円の控除した額を基準に計算されます。
ここも途中の計算式を省略して、世帯額は99,300円/年(100円未満切り捨て)
6.2.2介護保険料
介護保険料は、夫が第4段階の66,587円/年 妻が第2段階の33,294円/年
年間の可処分金額は、2,446,699円/年(203,891円/月)です。
夫婦2人で月額20万円です。
この額は、2000万円問題の発端となった金額なので、必要な老後資金に足りないわけです。
7.まとめ
税金と社会保険料を年金支給額から差し引いた可処分金額
国民年金 年間の可処分金額は、1,463,884円/年(93.7%)121,990円/月です。
厚生年金 年間の可処分金額は、2,446,699円/年(92.5%)203,891円/月です。
税金が掛からないほどの額であることがわかりましたが、社会保険料の負担は大きいです。
2000万円問題は、厚生年金受給者世帯の例であって、国民年金だけの世帯はもっと厳しい環境にあることがおわかりいただけます。
くどいようですが、現役の方は今からでも遅くはないので、老後資金の準備をしてください。
すでにリタイアした方は、取りうる手段は限られていますが、あきらめずに努力していくしかありません。