相続で戸惑わないための知識編 (相続税の計算概要)

両親がいくら元気だとしても、いつかは来る相続。
その時になって慌てないようしっかりと備えておくことは大切です。

でも、「相続なんて、相続税を払うぐらいの財産がある人しか関係ないんじゃないか」と考えていませんか?

それは間違いです。
近年、家庭裁判所が扱う遺産分割の調停は、相続税のかからない家庭のケースが増えてきています。
つまり相続税がかからない家庭であっても、揉めているケースは多いと言うことです。
逆に、5000万円以上の資産のある家庭では調停は少ない傾向にあります。

また被相続人が、事業などで借金を抱えている、連帯保証人になっているといった場合も考えられます。
財産がなくとも、負債がある場合、安易に相続してしまって、思わぬ借金をかぶることも大いにあり得ます。

相続で家族が揉めないため、また債務を相続しないためにも、準備しておくことは重要だと考えました。

今回、私が相続する事になった時の備忘録として、いくつかのテーマで作成してみました。おそらく高齢の母に代わり私が色々と手続きをすることになると思います。(私の母が喪主になった場合の一時相続を想定して書いています)

相続人も確定しようやく遺産分割協議をする事になります。ここで重要なのは、財産の評価です。誰もが納得できる分割を行うためにも相続財産の適正な評価が有ってこそです。

分割後は、いよいよ各個人の相続税の計算を行うことになります。

今回は、相続人別の相続税額の計算の流れを調べました。

1.遺産と債務のすべてを調査するところからスタートです

1.1 預貯金口座・不動産・有価証券・骨董品(美術品)・ゴルフ会員権・ネット取引などを調べる

生命保険の死亡保険金、医療保険の給付金、未払の年金、死亡退職金等を調べます。

【注意】もし家族名義で、名義本人が知らない通帳が見つかった場合は、被相続人の財産に算入されます。被相続人が贈与していたつもりでもダメです。だいたい孫名義の通帳は、往々にしてこれに該当します。

1.2 負債を調べる

忘れてならないのが、負債です。借金やローンなどマイナス財産も相続します。

その他連帯保証人になっていた場合は、その立場も相続するので、負債を負うリスクはあります。

被相続人は、連帯保証人だけにはならないことが、家族の将来のために必要です。

2.相続財産の価値を評価します

相続人が不公平にならないよう、納得できる遺産分割には、相続財産の適正な評価額が必要です。

2.1 始めに、非課税となる財産を相続財産から除外し、債務の支払い分も相続財産から控除します。

・葬儀費用など、相続財産から控除出来る額を計算し控除します。

2.2 現金以外の課税対象となる財産を時価に換算します

・株式・不動産・貴金属・骨董品(美術品)・ゴルフ会員権などの価値を計算する。

・著作権・特許権など形のない権利なども計算する。

2.3 生前贈与や遺贈の持ち戻しの計算を行う

相続開始時の財産の価額が確定した後は、特別受益の持ち戻しと、

相続開始前3年以内の贈与財産の相続税課税価格への加算を行います。

特別受益の持ち戻し価格は、相続開始時の相続税評価額で評価します。

一方、相続人と遺贈をうける人が生前に贈与を受けた、相続開始前3年以内の贈与財産を相続税課税価格に加算します。評価額は、贈与時の相続税評価額です。

2.4 みなし相続財産の計算

死亡保険金と死亡退職金は受取人に指定された方の固有財産になります。よって、遺産分割の対象にはなりません。しかし、死亡保険金の受取人が被相続人であったり、死亡退職金の受取人が指定されていない場合は相続財産となり、遺産分割の対象になります。

2.5 相続財産全ての評価額を合計して、相続税の課税遺産総額を算出します。

初めに、控除出来るものを控除します。

・基礎控除=3000万円+相続人の数×600万円を控除

・死亡保険金と死亡退職金の非課税額の控除=法定相続人の数×500万円(併用可)

ようやく相続税の計算に必要な、課税遺産総額が見えてきました。

3.課税遺産総額が決まったらいよいよ相続税の計算をおこないます。

計算は3段階に分けて進めます。

3.1 法定相続分に応じた取得をしたと仮定して、相続税の総額を算出します

相続税総額の計算方法

《例》法定相続人が、妻と子が2人で、課税遺産総額が10,000万円の場合

妻の法定相続分=10,000×1/2=5,000万円

5,000万円の相続税=5,000×0.2ー200=800万円

子供の法定相続分はそれぞれ=10,000×1/2×1/2=2,500万円

2,500万円の相続税=2,500×0.15ー50=325万円

よって、相続税の総額=800+325+325=1,450万円になります。

相続税の速算表

定相続分に応ずる取得額 税率 控除額
1000万円以下 10% 0円
3000万円以下 15% 50万円
5000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1700万円
3億円以下 45% 2700万円
6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円

3.2 算出された相続税を、実際に受け取った遺産額に応じて、各相続人に振り分ける

課税遺産総額から相続税の総額を算定できたら、各相続人が受け取った相続財産の額に応じて相続税額を分けていきます。

《例》3.1を妻の相続分7,000万円、子は1,500万円ずつとする。相続税額は、1,450万円です。

妻の相続税額=1,450×7,000/10,000=1,015万円

子の相続税額はそれぞれ=1,450×1,500/10,000=217.5万円 となります。

【注意】ここで、もし10ヶ月以内に遺産分割協議が決着しないようであれば3.1で計算した相続税を各相続人がとりあえず納付しておきます。遺産分割協議書が出来た時点で再度更生して税額を申告します。

3.3 各相続人の非課税枠を計算し、最終的な各相続人の相続税を確定する

・配偶者控除

配偶者の税額軽減額は以下の計算式で行います。

配偶者の税額軽減額=相続税の総額×(①か②のいずれか少ない額)/課税遺産総額

① 課税遺産総額×1/2 又は1億6,000万円のどちらか多い方の額
② 配偶者が実際に相続した課税価格

・小規模宅地等の特例をつかう

・未成年者控除

未成年控除の額=(20歳-現在の年齢)×10万円
(1年未満の期間は切り捨てる。13歳11か月の場合は13歳から7年として算定する)。

・障害者控除

満85歳になるまでの年数×10万円(1年未満の期間は1年として算定)
特別障害者の場合は20万円で算定する。

・贈与税額の控除

生前贈与の贈与税を相殺する。贈与税の方が多ければ還付される。

・相続時精算課税制度の精算を行う。

・兄弟姉妹、遺贈を受けた第三者、養子になった孫は相続税を2割加算する。

《例》3.2で計算された妻の配偶者控除額の計算式

妻の配偶者控除額=1,450×7,000/10,000=1,015万円なので、相続税はゼロになります。

ブログやってます

リタイア生活を楽しんでいます

老後のお金の悩み、親や家族のこと、社会とのつながりなど現役時代とは全く違い時々ギャップを感じます

そんな生活のなかで感じたことや、この年になって知っておかなければならないことなど時々(^^;)紹介しています