相続で戸惑わないための知識編 (遺言書)

両親がいくら元気だとしても、いつかは来る相続。
その時になって慌てないようしっかりと備えておくことは大切です。

でも、「相続なんて、相続税を払うぐらいの財産がある人しか関係ないんじゃないか」と考えていませんか?

それは間違いです。
近年、家庭裁判所が扱う遺産分割の調停は、相続税のかからない家庭のケースが増えてきています。
つまり相続税がかからない家庭であっても、揉めているケースは多いと言うことです。
逆に、5000万円以上の資産のある家庭では調停は少ない傾向にあります。

また被相続人が、事業などで借金を抱えている、連帯保証人になっているといった場合も考えられます。
財産がなくとも、負債がある場合、安易に相続してしまって、思わぬ借金をかぶることも大いにあり得ます。

相続で家族が揉めないため、また債務を相続しないためにも、準備しておくことは重要だと考えました。

今回、私が相続する事になった時の備忘録として、いくつかのテーマで作成してみました。
おそらく高齢の母に代わり私が色々と手続きをすることになると思います。(私の母が喪主になった場合の一時相続を想定して書いています)

もしも自分が遺言書を書きたくなった時にどうすれば良いか?調べてみました。(^o^)

1.遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言といった種類がある

1.1 自筆証書遺言の概要とメリット、デメリット

自筆証書遺言は手軽に書ける反面、記入上気をつけないといけないお約束があり、下手をすると遺言が無効になることもあります。記入上、やってはいけない事を確認しながら書く必要がありますが、そんなに大したことではなさそうです。下表に概要とメリット・デメリットを記載しました。

概要 メリットとデメリット
・偽造を防ぐため、本人の直筆であること

・書面の一部分であっても代筆は無効になる

・ワープロでの作成は無効になる

・録音や録画は無効になる

・筆記用具は、消えない万年筆やボールペンを使用しなければならない

・日付は必ず入れる(「○○月吉日」は無効となる)

・署名もフルネームを自筆で記入する

・押印は必要で、実印を用いることが望ましい

・具体的にどの財産を誰に相続させるか明確に書く

メリット

・誰にも内容を知られずに遺言書を作成できる

・遺言書はいつでも書き直せる

・遺言書の存在とその内容は誰にも秘密にできる

・費用がかからない

デメリット

・書式のルール違反は遺言書が無効になる

・家庭裁判所で検認を受けることが必要

・遺言書の有ることを、誰も気づかない恐れがある

次は、法務省のHPに掲載されていた雛形です。
物件等の目録はワープロで作成することはOKになりました。

 

1.2 自筆書証遺言の記入上の注意点を雛形から説明します。

・表題は、誰でも遺言書と分かるように、「遺言書」と書くのが望ましい

・相続させる物件を具体的に書く

・相続人が明確に分かるように書く

・「相続させる」とはっきり書く

・不動産は、土地と建物を分けて書く

・金融機関の口座は、銀行名・支店名・口座番号を明記する

・相続人ではない人に財産を遺贈したい場合は、遺言書に書いておく

・日付は遺言書の作成日を記入する。「吉日」は無効となるので注意する

・封筒に入れて保管する

1.3 公正証書遺言の概要とメリット、デメリット

公正証書遺言を作成する手順 メリットとデメリット
①遺言したい内容と、証人を2人見つけておく

(証人は公証役場で、有料で紹介してもらえる)

②公証人に遺言の内容を伝え、公証人が筆記して作成される。

③公証人が作成した遺言書を確認した後、遺言者・公証人・証人のそれぞれが署名・押印し完了です。

④遺言書は公正証書として公証役場に保管されます。

メリット

・本人は遺言書を書かなくとも良いので記入上の間違いがない

・遺言書は公証役場に保管され紛失することはない

・家庭裁判所の検認がいらない

・遺言が無効になることはない

・偽造する事が出来ない

・遺言に則って遺産相続が開始できる

デメリット

・手続きに時間や費用がかかる

・公証人や証人に内容が知れる

1.4 公正証書遺言の費用の計算の例

《例》下表の条件で公正証書遺言の作成手数料を計算しました。

相続人 相続財産の明細 時価 固定資産税評価額
A銀行口座預金 1,500万円
B土地 2,500万円
C建物 700万円
長男 D銀行口座預金 1,000万円
E土地 4,000万円

 

①妻の手数料は、相続額の合計が4,700万円なので、手数料は下表より29,000円になります。

②長男の手数料は、相続額の合計が5,000万円なので、手数料は下表より29,000円になります。

③遺言加算の11,000円を加算して、手数料の合計額=29,000+29,000+11,000=69,000円となります。

公正証書遺言の作成には費用がかかりますが自筆証書遺言よりメリットは大きいですね。

公正証書遺言の費用

財産の価額 手数料
100万円まで 5,000円
200万円まで 7,000円
500万円まで 11,000円
1,000万円まで 17,000円
3,000万円まで 23,000円
5,000万円まで 29,000円
1億円まで 43,000円
1億円超~3億円まで 5,000万円ごとに13,000円を加算
3億円超~10億円まで 5,000万円ごとに11,000円を加算
10億円超 5,000万円ごとに8,000円を加算

*遺言加算:1通の遺言公正証書の目的価額の合計額が1億円までの場合は、1万1000円を加算する
*祭祀の主宰者を指定する場合は、手数料1万1000円になる。
*公証人が出張して遺言公正証書を作成する場合の手数料は、遺言加算を除いた目的価額による手数料額の1.5倍が基本手数料となり、これに、遺言加算手数料を加える。この他に、旅費(実費)、日当(1日2万円、4時間まで1万円)が必要となる。
*作成された遺言公正証書の原本は、公証人が保管し、保管のための手数料は不要。【日本公証人連合会HPから】

1.5 秘密証書遺言の概要

・自分で遺言書を作成し、封印後公証人と2人の証人の立ち会いで確認してもらう方法です

・遺言の内容を秘密にしながら、遺言の存在が証明できます

・ワープロで作成が可能です

・遺言書は公証役場で保管してもらえません

・遺言書の内容のチェックは行われないので、記載にミスがあると遺言が無効になる可能性があります

・手続きに費用が必要です

2.その他特別な状況下での遺言

・一般危急時遺言

・難船危急時遺言

・一般隔絶地遺言

・船舶隔絶地遺言 があります。

3.遺言で出来る事

・相続人は原則として遺言の内容に従わなければならないです

(遺言の内容によっては、必ずしも遵守しなくて良い場合があります)

・財産分与は被相続人が自由に決める事が出来るので、遺言は法律に優先されます

・法定相続分と異なる割合で相続させることが出来ます(しかし遺留分は侵せません)

・遺言書執行者の指定ができます

・祭祀承継者の指定ができます

・内縁の妻に財産を譲ることができます

・非嫡出子を認知する事ができます

・再婚相手の連れ子に財産を残せることができます(養子縁組をしていない場合)

・法定相続人以外への遺贈や公共団体への寄付ができます

・相続人から虐待を受けていた場合、その相続人の排除や相続の取消ができます

・相続分の指定は、相続人全員または一部の相続人に対して行うことができます 等

4.遺言の取消方法

・遺言は内容の変更や取り消しができます

・訂正しても遺言自体は有効で、変更や取り消しをした部分が無効となります

・遺言の内容全て撤回する場合は、遺言書を破棄すればすみます

・公正証書遺言は、手元の謄本を破棄しても公証役場に原本があるので、取り消しにはなりません

・複数の遺言書がある場合は、最新の日付の遺言書が有効になります

・複数の遺言書の内容に重複がなければ、全てが有効です