相続で戸惑わないための知識編 (土地の評価額)

両親がいくら元気だとしても、いつかは来る相続。その時になって慌てないようしっかりと備えておくことは大切です。でも、「我が家は、相続税を払うぐらいの財産がないから関係ない」と考えていませんか?

それは間違いです。近年、家庭裁判所が扱う遺産分割の調停は、相続税のかからない家庭のケースが増えてきています。

今回、私が相続する事になった時の備忘録として、いくつかのテーマで知っておくべき事を書き出しました。おそらく高齢の母に代わり私が色々と手続きをすることになると思います。(私の母が喪主になった場合の一時相続を想定して書いています)

今回は、相続財産の評価額の計算方法を考えてみます。

1.土地の価格の種類

価格の種類 時価を100としたときの割合
売買取引時価(実勢価格) 100
公示価格 90
路線価 70〜80
固定資産税評価額 60~70

 

2.相続税の計算は、路線価と固定資産税評価額を用います

2.1 路線価方式の計算方法

基本的には、土地の相続税評価額=路線価×地積となります。

2.2 倍率方式

路線価が決められていない地域は、倍率方式で計算します。

固定資産税課税明細書に記載されている評価額を調べ、「固定資産税評価額に乗ずる倍率等」を乗じて算出した額になります。

2.3 土地の相続税評価額の計算方法

①土地の相続税評価額=路線価×地積

②土地の状況に応じて補正をかけます

・土地が角地にある場合に加算します

・土地の奥行きによって補正します(奥行長大補正率表)

・土地の間口が狭い場合に補正します(間口狭小補正率表)

・土地が不整形な場合に補正します(不整形地補正率表)

・土地の地積が基準以上の場合に「地積規模の大きな宅地の評価減」を行います

・借地権割合で補正します

・借家権割合で補正します(路線図のA~Gの記号)

・私道、セットバックを補正します

・がけ地を補正します(がけ地補正率表)

2.4 具体的な計算例

言葉では分かりにくいので、実際の事例に従って計算してみましょう。

《例1》下表のケースの宅地と家屋の相続税評価額を計算してみます。

*普通商業・併用住宅地区

*角地(側方路線影響加算率が0.08)で、正面路線価が500千円と側方路線価が200千円道路に面している。

*縦横25m×24mで、奥行価格補正率は1.00

*借地権割合が、60% 借家権割合が、30%

*「地積規模の大きな宅地」には該当しない

*3階建ての自宅があり、各階200㎡で、1,2階は第三者に賃貸している(賃貸割合は100%)

*家屋の固定資産税評価額は、90,000千円

 

①土地の相続税評価額を計算する

角地の1㎡辺りの評価額を計算します。計算式は以下の通りです。

評価額=正面路線価×奥行価格補正率+側方路線価×奥行価格補正率×側方路線影響加算率

=500千円×1.00+200千円×1.00×0.08=516千円

よって、516千円×25m×24m=309,600千円となります。

②自宅の一部が賃貸されているので、補正を行います。

自用部分が全体の200㎡/600㎡=1/3 309,600千円×1/3=103,200千円

賃貸部分が全体の400㎡/600㎡=2/3 賃貸部分の評価額の計算式は以下の通りです。

309,600千円×2/3×(1−借地権割合×借家権割合)=309,600千円×2/3×0.82

=169,248千円 103,200千円+169,248千円=272,448千円 よって、

土地の相続税評価額は272,448千円になります(賃貸に出すことで12%の減額になりました)

③次に、家屋の相続税評価額の計算をしてみましょう。

家屋の相続税評価額=固定資産税評価額×1.0です。

=90,000千円×1.0=90,000千円になりますが、賃貸しているので、借家権割合で補正します。

自用分=90,000千円×1/3=30,000千円

賃貸部分=自用家屋の価額×(1−借家権割合×賃貸割合)=90,000千円×2/3×(1−0.3×1.0)=42,000千円 よって、30,000千円+42,000千円=72,000千円

家屋の相続税評価額は、72,000千円となります。(賃貸に出すことで20%の減額になりました)

《例2》上記の場合で、セットバックが24㎡ある場合の土地の相続税評価額を計算します。
(賃貸はしていないとする)

⑤上記の①より、セットバックがない場合の評価額は、309,600千円です。

セットバック部分の評価の減額の計算式は以下の通りです。

セットバック部分の評価の減額=309,600千円×(セットバック部分の地積/地積)×0.7

=309,600千円×(24㎡/(25m×24m))×0.7=8668.8千円(70%が減額されました)

309,600千円−8,668.8千円=300,931.2千円が相続税評価額になります。

3.マンションの相続税評価額の計算方法

敷地権の相続税評価額 部屋の相続税評価額
マンション全体の敷地の相続税評価額×敷地権割合 固定資産税評価額

マンションの相続税評価額=敷地権の相続税評価額+部屋の相続税評価額 となります。

4.有価証券の相続税評価額の計算方法

4.1 上場株式の評価方法

次の4つのうち、最も低い株価で評価します。

①相続開始日(通常は被相続人の死亡日)の終値
※相続開始日が取引所の営業日ではなかった場合は、前後で最も近い日の終値で、前後が同じ近さの場合は、その平均額を用います

②相続開始日の当月の毎日の最終価格の月平均額

③相続開始日の前月の毎日の最終価格の月平均額

④相続開始日の前々月の毎日の最終価格の月平均額

《計算例》下表の場合の計算について

区分 金額
平成30年11月の毎日の最終価格の月平均額 4,898円
平成30年12月の毎日の最終価格の月平均額 5,011円
平成31年1月の毎日の最終価格の月平均額 4,977円
平成31年2月の毎日の最終価格の月平均額 4,965円
平成31年2月8日(金)の最終価格 4,995円
平成31年2月9日(土)の最終価格 取引なし
平成31年2月10日(日)の最終価格 取引なし
平成31年2月11日(祝)の最終価格 取引なし
平成31年2月12日(火)の最終価格 4,963円

 

評価額は、5,011円、4,977円、4,965円、4,963円から選ぶことになります。

最も低額な4,963円が評価額になります。

4.2 非上場株式の評価方法

・株主の区分による評価方式

区分 株主の状況 評価方法
同族株主のいる会社 同族株主 議決権割合が5%以上の株主 原則的評価方式
議決権割合が5%未満に株主 中心的な同族株主がいない場合
中心的な同族株主がいる場合 中心的な同族株主
役員である(となる)株主
その他の株主 配当還元方式
同族株主以外の株主
同族株主のいない会社 議決権割合の合計が15%以上のグループに属する株主 議決権割合が5%以上の株主 原則的評価方式
議決権割合が5%未満の株主 中心的な同族株主がいない場合
中心的な同族株主がいる場合 役員である(となる)株主
その他の株主 配当還元方式
議決権割合の合計が15%未満のグループに属する株主

 

類似業種比較価額の評価方法

取引相場のない株式
個人事業 小会社 中会社 併用方式 大会社 上場会社
純資産の評価額 純資産価額 類似業種

比準価額

取引相場の株価
L=0.6 L=0.75 L=0.9
類×0.5+純×0.5

or

純の少ない方

類×0.6+純×0.4

or

純の少ない方

類×0.75+純×0.25

or

純の少ない方

類×0.9+純×0.1

or

純の少ない方

純資産

価額

*類:類似業種比準価額 純:純資産価額 とする。

《計算例》父から長男に4,000株を贈与した時の1株当たりの相続税評価額を計算する

株主構成

株主 役職 A株式会社 L=0.75
保有株数 持ち株比率
代表取締役 49,000株 98%
長男 取締役 1,000株 2%
合計 50,000株 100%

 

資本状況

資本金額 2,500万円
1株当たりの類似業種比準価額 900円
1株当たりの純資産価額 1,200円

株主の区分による評価方式の表から、評価方法が原則的評価方式の類似業種比準方式又は純資産価額方式を用いる事が分かります。

①類似業種比準価額×0.75+純資産価額×0.25=900円×0.75+1,200円×0.25=975円

②純資産価額=1,200円

①又は②のどちらか少ない額を用いるので、1株当たりの相続税評価額は975円となります。

5.投資信託の相続税評価額の計算方法

投資信託の相続税評価額は、次の式で計算することができます。

相続開始時の基準価額×口数-(相続開始日に解約した場合に源泉徴収される所得税の額)-(信託財産留保額及び解約手数料)

《例》下表の場合を計算します。

平成31年2月1日の保有口数 100万口
購入時の基準価額(1万口あたり) 8,800円
平成31年2月1日の基準価額(1万口あたり) 10,500円
平成31年2月1日に解約した場合の源泉徴収額(1万口あたり) 300円
信託財産留保額 解約時の基準価額の0.2%
解約時手数料 なし

計算式より

相続税評価額=10,500円×100−300円×100−10,500×100×0.2%=1,017,900円になります。

6.個人国債の相続税評価額の計算方法

《例》下表の場合を計算します。

額面金額 100万円
発行日 平成29年2月10日
経過利子相当額 138円
中途換金調整額 4,078円

相続税評価額=額面金額+経過利子相当分−中途換金調整額

=1,000,000+138−4,078=996,060円となります。

7.定期預金の相続税評価額の計算方法

《例》下表の場合を計算します。

預入残高 20,000,000円
預入日から平成31年3月20日までの約定利率の既経過利子(源泉所得税控除前の額) 55,000円
預入日から平成31年3月20日までの解約利率の既経過利子(源泉所得税控除前の額) 4,000円

定期預金の相続税評価額=預入残高+解約利率の既経過利子−源泉所得税額

=20,000,000+4,000−4,000×20%(特別復興税は考えないとする)=20,003,200円

8.ゴルフ会員権の相続税評価額の計算方法

《例》下表の場合を計算します。

購入価格(平成10年4月9日) 5,000万円
取引価格(平成30年8月25日) 800万円
名義変更時(購入日)に支払った仲介手数料 150万円
名義変更時(購入日)に支払った名義書換料 400万円
名義変更時(購入日)に支払った預託金 500万円

*名義書換料は返還されない
*預託金は、退会または譲渡時に返還を受けることができる。

取引相場のあるゴルフ会員権の相続税評価額の計算式は、

ゴルフ会員権の相続税評価額=相続開始時の取引価格×70%+預託金

=800万円×70%+500万円=1,060万円になります。

 

相続税評価額の計算はルールさえ分かれば、足して引いて、掛けて割ってという積み重ねですね。

でも、煩雑で分かりにくい(・o・)