何度聞いてもわかりにくいマクロ経済スライドを解説します(2/4)
年金額改定ルールのはなしです。
初めに、これから年金を受け取る人(新規裁定者)と、すでに受給している人で68歳になる人・すでになっている人(既裁定者)を押さえておかなければなりません。
と言うのも、年金額改定のルールは、
原則として、新規裁定者は名目手取り賃金変動率を、既裁定者は物価変動率を用いて改定するからです。
しかし、ただし書きがあります。
新規裁定者 | 基準年度以後再評価率(既裁定者) |
---|---|
名目手取り賃金変動率 | 物価変動率 |
但し、次の場合は原則と違います | |
名目手取り賃金変動率 < 物価変動率 < 1 物価変動率を用いる 名目手取り賃金変動率 < 1 < 物価変動率 1が基準 | 1 < 名目手取り賃金変動率 < 物価変動率名目手取り賃金変動率を基準 名目手取り賃金変動率 < 1 < 物価変動率 1が基準 |
調整期間における改定率 「名目手取り賃金変動率×調整率」を基準 *当該年度の改定率が前年度の改定率を下回るときは、1が基準。 | 調整期間における改定率 「物価変動率×調整率」を基準 *当該年度の改定率が前年度の改定率を下回るときは、1が基準 |
つまり、新規裁定者は原則、名目手取り賃金変動率を用います。しかし、名目手取り賃金変動率<物価変動率<1の場合は、物価変動率を用います。又、名目手取り賃金変動率<1<物価変動率の場合は1を基準とすると言うことです。
注)《名目手取り賃金変動率 = 物価変動率× 実質賃金変動率× 可処分所得割合変化率》
「原則」と「ただし書き」が混在していますね。これが誠に分かりにくくて、私は理解するのに結構な時間を費やしてしまいました。
では、「原則」と「ただし書き」に従って年金額の改定の手順を説明していきます。
これは、名目手取り賃金変動率と物価変動率の関係を図式化した物です。(厚生労働省)
①から⑥の場合が考えられますね。
初めに、■ 名目手取り賃金変動率>物価変動率の場合です。
赤枠で示した①、②、③の部分です。
先ほどの原則通りの改定が行われます。そして、マクロ経済スライドが実施されます。
次は、■ 名目手取り賃金変動率<物価変動率の場合です。
この場合は、3パターンあります。
パターン1 赤枠で示した⑥の部分です。
1(原点は1です)<名目手取り賃金変動率<物価変動率 の場合です
新規裁定者も既裁定者も名目手取り賃金変動率で改定されます。そしてマクロ経済スライドが発動されます。既裁定者が原則通りではありませんね。(既裁定者は、ただし書きに従う)
* 平成31年度は、1<名目手取り賃金変動率が0.6%<物価変動率が1.0% でした。⑥に該当します。
アップ率は、0.6%(名目手取り賃金変動率)−0.2%(スライド調整率)−0.3%(キャリーオーバー分)=0.1% になります。
パターン2 赤枠で示した④の部分です。
名目手取り賃金変動率<物価変動率<1 の場合です
新規裁定者も既裁定者も物価変動率で改定されます。マクロ経済スライドは発動されませんが、年金は物価下落分だけ下がります。新規裁定者が原則通りではありませんね。(新規裁定者は、ただし書きに従う)
*この部分は、ルール変更があり平成33年度から、名目手取り賃金変動率を基礎に計算します。(もっと減らすと言うことです)
パターン3 赤枠で示した⑤の部分です。
名目手取り賃金変動率<1<物価変動率 の場合です
新規裁定者も既裁定者も改定はありません。両者とも原則通りではありません。(両者ともただし書きに従う)
*この部分は、ルール変更があり平成33年度から、名目手取り賃金変動率を基礎に計算します。(もっと減らすと言うことです)
ここまでの内容はいかがだったですか? 「原則」と「ただし書き」が混在するのでとてもややこしいのです。
私はもうヘトヘトなのでこのあたりで投降します。
次回、2回目に続く。