医療費の自己負担額の改定
医療技術の高度化と画期的な治療方法・新薬の創出によって、私たちは健康で豊かな暮らしをする事が可能となりました。しかし、それは高コストを伴うため、健康保険制度を維持していくために、自己負担額や保険料を増やさざるを得ない状況になっています。
今回は、私たちが負担する医療・介護費用について厚労省の資料をもとに考えてみました。
1.自己負担額
過去において、70歳以上の自己負担は1割でしたが、現役並み所得者という区分が創設され、3割負担となりました。また、70歳以上75歳未満の現役並みでない区分は2割負担になりました。
2.高額療養費制度
高額な医療費の支払によって家計の負担が重くならないよう、ひと月に一定の上限額を超えた場合、その超えた金額を支給する制度です。自己負担限度額は、年齢と所得によってその額が決まります。収入の多い家庭は負担額も多くなっていますが、大きな助けになりますね。
69歳以下の高額療養費制度の自己負担限度額
《69歳以下の方の上限額》 |
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適用区分 |
ひと月の上限額(世帯ごと) |
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ア |
年収約1,160万円~ 健保:標報83万円以上 国保:旧ただし書き所得901万円超 |
252,600円+(医療費-842,000)× 1 % |
イ |
年収約770~約1,160万円 健保:標報53万~79万円 国保:旧ただし書き所得600万~901万円 |
167,400円+(医療費-558,000)× 1 % |
ウ
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年収約370~約770万円 健保:標報28万~50万円 国保:旧ただし書き所得210万~600万円 |
80,100円+(医療費-267,000)× 1 % |
エ |
~年収約370万円 健保:標報26万円以下 国保:旧ただし書き所得210万円以下 |
57,600円 |
オ |
住民税非課税者 |
35,400円 |
70歳以上の高額療養費制度の自己負担限度額
《70歳以上の方の上限額(平成30年8月診療分から)》 |
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適用区分 |
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ひと月の上限額(世帯ごと) |
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外来(個人ごと) |
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現役並み |
年収約1,160万円~ 標報83万円以上/課税所得690万円以上 |
252,600円+(医療費-842,000)× 1 % |
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年収約770万円~約1,160万円 標報53万円以上/課税所得380万円以上 |
167,400円+(医療費-558,000)× 1 % |
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年収約370万円~約770万円 標報28万円以上/課税所得145万円以上 |
80,100円+(医療費-267,000)× 1 % |
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一般 |
年収156万~約370万円 標報26万円以下 課税所得145万円未満等 |
18,000円 (年14万4千円) |
57,600円 |
住民税 非課税等 |
Ⅱ 住民税非課税世帯 |
8,000円 |
24,600円 |
Ⅰ 住民税非課税世帯 年金収入80万円以下など |
15,000円 |
ここ数年の「70歳以上の高額療養費制度の自己負担限度額」の増額状況
70歳以上の自己負担限度額は、H29年7月から2回に渡って改定され、住民税課税世帯を除いて増額されました。
高齢であっても、応分の負担をすると言うことですね。
【多数回該当の場合の負担額】
過去12ヶ月に3回以上高額療養費の支給を受けた場合は、4回目以降の額が減額されます。
多数回該当は、他の医療保険制度の支給回数を通算することはできません。
《69歳以下の方の場合(平成30年8月以降の診療分)》 |
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所得区分 |
本来の負担の上限額 |
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多数回該当の場合 |
年収約1,160万円~の方 |
252,600円+ (医療費-842,000円) ×1% |
140,100円 |
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年収約770万~約1,160万円の方 |
167,400円+ (医療費-558,000円) x1% |
93,000円 |
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年収約370万~約770万円の方 |
80,100円+ (医療費-267,000円) ×190 |
44,400円 |
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~年収約370万円 |
57,600円 |
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住民税非課税者 |
35,400円 |
24,600円 |
多数回該当になって、軽減されるとしても、もし毎月高額な医療費が必要な病気になったとすると年間の自己負担額はかなり高額になりますね。ちなみに、年収1,160万円以上の場合、毎月該当したと仮定すると、年間の負担額は1,681,200円。いくら高給取りでもダメージはかなりのものになります。高額療養費制度はセーフティネットですが、疾病によっては守り切れないケースが考えられます。
3.高額介護合算療養費制度
世帯内の同一の医療保険の加入者について、毎年8月から1年間(毎年8月から翌年7月末)にかかった医療保険と介護保険の自己負担を合計し、自己負担限度額を超えた金額を支給する制度です。
高額療養費制度が「月」単位で負担を軽減するのに対し、合算療養費制度は、「月」単位での負担軽減があっても、なお重い負担が残る場合に「年」単位でそれらの負担を軽減する制度です。
H30年8月から、現役並みが細分され、限度額が引き上げられ70歳未満と同じ額になりました。
個人の負担は今後減ることはないと思いますが、そうならないよう私たちも、本当に必要な受診かどうかを考え、健康増進を心がけ、少しでも医療費を増やさない様な努力をする事が必要だと思いました。