離婚時に年金分割されると、妻はこれぐらい増額されます
もう我慢できないわ、自分勝手な夫とは退職を機に別れたい、などと離婚を考えている女性は多いことだと推察します。
そして、出来ることなら、年金分割して、元夫の年金を少しでも奪ってやればせいせいする、そしてやっと一人楽しく老後を過ごせる、とお考えの貴女、果たしてそうでしょうか?
《 目 次 》
この願望を、次の3つの事例を基に検証してみました。
結論から言うと、将来のことを十分に考え抜いてから決めても遅くないと言うことでしょうか。
勿論、貴女にそれなりの資産(住む家、預貯金、遺産等なんでも構いません)があるかどうかで選択肢は大きく違ってきます。
でも、一般的には十分な資産のない場合が殆どでしょう。そうすると、年金分割しても生活は豊かにはなりにくいと言わざるを得ません。お互いにメリットは少ないと考えられます。
では、本当にそうなのか、具体的な金額を計算してみましょう。
現実を知ればまた考えが変わると思います。
【例1】平均的な会社員の場合
・夫 S55.4に入社し、H30.3に退職した。 ・妻 56歳(離婚時) 専業主婦 厚生年金被保険者期間なし ・妻は夫の退職と同時に離婚し、合意分割を申請する。婚姻期間は28年間。 《夫の平均標準報酬月額と平均標準報酬額》 ・平均標準報酬月額 H15.3まで 28万円 13年間(婚姻期間中) ・平均標準報酬額 H15.4以降 36万円 15年間(婚姻期間中) ・按分割合 55%:45% ・婚姻期間中の年金総額は、 28万円×(7.125/1000)×13年×12月+36万円×(5.481/1000)×15年×12月≒666,390円 (従前額保障は考慮しない) |
1.婚姻からH20.3までの年金額
28万円×(7.125/1000)×13年×12月+36万円×(5.481/1000)×5年×12月=429,610円
2.3号分割の計算をする
H20.4以後の年金額
36万円×(5.481/1000)×10年×12月=236,780円
1/2ずつ分割するので、妻の年金額は=118,390円
3.合意分割期間を計算する
3号分割後の年金額は、夫の年金額=548,000円 妻の年金額=118,390円 となり、比率は、82.2%:17.8%。
よって、年金総額666,390円を、55%:45%に按分するには、夫から妻へ、181,485円移さなければならない。
この額を期間中に振り分けると、
H20.3までの夫の年金額から、妻へ116,669円移行し、H20.4以後の夫の年金額から妻に64,816円以降しなければならない。
この計算結果が、下表になります。
|
分割前 |
3号分割実施後 |
3号分割実施後に合意分割を行った結果 |
||||
婚姻期間 |
H20.3まで |
H20.4以後 |
H20.3まで |
H20.4以後 |
年金額 |
按分率 |
|
夫の年金額 |
666,390 |
429,610 |
118,390 |
312,941 |
53,574 |
366,515 |
55% |
妻の年金額 |
0 |
0 |
118,390 |
116,669 |
183,206 |
299,875 |
45% |
合計 |
666,390 |
429,610 |
236,780 |
429,610 |
236,780 |
666,390 |
100% |
上記の表から、按分後の妻の年金額を計算します
=基礎年金約78万円(満額と仮定)+約30万円(按分された額)=約108万円。
【例2】夫が高年収の場合は、どうか?
例1と条件は同じで、以下がことなる ・平均標準報酬月額 H15.3まで 50万円 13年間(婚姻期間中) ・平均標準報酬額 H15.4以降 87万円 15年間(婚姻期間中) |
3号分割後に、合意分割が行われ、最終的に按分率に収束するので、簡単に計算しました。
対象期間の年金額=50万円×(7.125/1000)×13年×12月+87万円×(5.481/1000)×15年×12月
=555,750+858,325=1,414,075円 55%:45%に分割すると、夫777,741円:妻636,334円
高年収の夫からの、按分後の妻の年金額
=基礎年金約78万円(満額と仮定)+約63.6万円(按分された額)=約141.6万円
金額については、人それぞれの評価ですが、いかがでしょうか?
どうしても離婚して年金分割をしたい場合は、
・出来るだけ多く財産を分与して貰う
・相手側に弱点があれば、慰謝料を請求する(-_-)
・それから、注意しないといけないことは、年金分割しても妻が年金を受け取れるのは、65歳になってからです。それまでの、9年間の生活をどうするかも考えておかなくてはいけません。
既に夫が年金受給者なら、国民年金・厚生年金保険年金証書を見てください。
平均標準報酬月額と平均標準報酬額が記載されていますので、先ほどの計算式に当てはめれば具体的な額が解ります。
ただし、ご主人がまだ現役会社員の場合は、会社に問い合わせしないといけないので、バレますね。
年金分割は、最大婚姻期間中の1/2の年金額しか取れませんが、夫が亡くなると遺族厚生年金が受給できます。その額は、夫の年金額の3/4なのでもっと多い額ですし非課税です。
そこの所は、犠牲を払って待つだけの価値がある年金額かどうかだけですね。
年金分割出来そうな人はこんな人?
妻が厚生年金被保険者で、自立することが出来ていて、分かれても住む家とそこそこの貯蓄がある。そして夫に少しでも敵討ちをしたい人。(-_-メ
【例3】夫、妻ともに厚生年金被保険者の場合(3号分割期間なし)
妻は、S55年に就職。厚生年金被保険者期間は、38年間 H15.3までの平均標準報酬月額は、25万円 H15.4.に婚姻し、H30.3に離婚した場合 婚姻期間は、15年 按分率は、50%:50% 夫 H15.4.1以後、離婚までの平均標準報酬額を、60万円とする 60万円×5.481/1000×15年×12月=591,948 妻 H15.4.1以後、離婚までの平均標準報酬額を、30万円とする 30万円×5.481/1000×15年×12月=295,974 最大50%まで按分出来たとして、年金総額=(591,948+295,974)×1/2=443,961 443,961−295,974=147,987円夫から奪う事が出来ました。結構ダメージ大きい(^o^)かも。 |
妻の婚姻前の年金額は、25万円×(7.125/1000)×23年×12月=491,625円
按分後の妻の年金額
=基礎年金約78万円(満額と仮定)+約44.4万円(按分後の額)+約49.1万円(婚姻前の年金額)=約171.5万円
働いている女性は、専業主婦より離婚に強いですね。
離婚を勧めるものではありませんが、やむを得ない事情もあるでしょう。
そういうときは、是非年金分割をして、少しでも将来のために備えてください。